4Kプロジェクタも低価格機種が登場してきています。10万円台で4Kプロジェクタが手に入るなら買ってみようかな?って思いますよね。
前回の記事では「ネイティブ4K」とか「擬似4K」とか書いてて良く分からないと思う方に向けて各名称が何を表しているかを説明しました。
「やっぱり低価格は本物の4Kじゃないの?」と思われている方に向けて、どのように低価格を実現しているのか、本物の4Kなのか、高価格機種との違いなどを説明したいと思います。
4K表示方式
現在、4Kを投影できるプロジェクタの表示パネル方式には以下のものがあります。
- 液晶(透過型3LCD)
- LCOS(反射型3LCD)
- DLP
各パネルには画素が並んでおり、フルHDだと1920×1080、4Kだと3840(または4096)×2160の画素が必要です。
ところが低価格4Kプロジェクタはパネルの画素数が上記に満たないのに4Kの映像投影を実現しています。
以下の表は各パネルタイプのパネル画素数と投影画素数です。
パネルタイプ | パネル画素数 | 投影画素数 | 実現方法 |
LCOS(反射型3LCD) | 4096×2160 | 4096×2160 | 直接投影 |
液晶(透過型3LCD) | 1920×1080 | 1920×1080×2枚 | 斜め0.5画素ずらし |
DLP1 | 1920×1080 | 1920×1080×2枚 | 斜め0.5画素ずらし |
DLP2 | 2716×1528 | 2716×1528×2枚 | 斜め0.5画素ずらし |
DLP3 | 1920×1080 | 3840×2160 (1920×1080×4枚) |
縦横1画素ずらし |
気づかれたと思いますが、LCOS以外はパネル画素数と投影画素数が一致していません。実現方法の欄に書いた特殊な技術を使用して4Kまたは4K相当の映像を投射します。DLPは3種類に分けられます。
「LCOS以外は擬似的に4Kなの?」と思われるかもしれませんが、擬似的なものと完全に4Kと呼べるものに分かれます。
結論から言うとDLP2,3は完全な4Kです。
画素ずらし技術
そもそもプロジェクタやテレビの映像は、パラパラ漫画のように静止画を連続させ、擬似的に動画を作り出しています。人間の目の反応速度が追いつかない速度であれば、実物の動きか静止画の切り替わりなのかを区別することはできません。
映画コンテンツであれば24fps、テレビ放送だと60fpsです。
斜め0.5画素ずらし
。
出典:エプソン社の4Kエンハンスメントテクノロジーの解説ページ
斜め0.5画素ずらしであれば、例えば60fpsの映像を2枚に分離させ、120fpsで0.5画素ずらしながら投影します。映像を視聴する人間の目には60fpsなのか120fpsかを検知することができないので、画素数(解像度)が増加した1枚の映像として認識します。
このとき、どれくらい解像度が上がるのかですが、斜めにずらしているので斜めに2倍の解像度となりますが、縦横それぞれでは2倍にはなりません。
縦横で換算すると縦横それぞれがルート2倍の解像度となります。
また、斜めにずらすので、投影する画像を高度な演算で作成する必要があります。
縦横1画素ずらし
縦横1画素ずらしは、表示パネルの縦横に2倍の画素数があると仮定し、時分割で4枚の画像を縦横それぞれ1画素ずつずらして投影します。
出典:OPTOTUNE社のBEAM SHIFTING技術ページより
60fpsであれば4倍の速度の240fpsで投影し、人間の目には4倍の画素数の映像として認識されます。
4つの画素を時分割で1画素ずつ点灯させているのと同じことなので、解像度は縦2倍、横2倍になります。フルHD1920×1080のパネルを用いれば、3840×2160の映像が実際に投影されます。
また、元々ある4つの画素を時分割で抜き出すだけなので、演算処理は非常に簡単です。
画素ずらしの解像度
具体的に画素ずらしを行ったときのパネル画素数と認識画素数を比較してみます。以下の表で4Kに達している部分を赤字にしました。
実現方法 | パネル画素数 | 投影画素数 | 認識画素数 |
斜め0.5画素ずらし | 1920×1080 | 1920×1080×2枚 | 2716×1528 |
斜め0.5画素ずらし | 2716×1528 | 2716×1528×2枚 | 3840×2160 |
縦横1画素ずらし | 1920×1080 | 3840×2160 | 3840×2160 |
斜め0.5画素ずらしの場合、フルHDのパネル画素数だと認識画素数は4Kに達していません。斜め0.5画素ずらしで4Kに達するためにはパネル画素数が2716×1528必要です。
一方、縦横1画素ずらしはフルHDのパネル画素数で4Kを実現しています。
各方式の特徴
以上のように、低価格機種は高額なパネルを使用せずに画素ずらし技術を使って4Kまたは4K相当を実現しています。
高額な機種も含めて4Kに絞って各方式の特徴を説明します。
LCOS(反射型3LCD)
LCOSはパネル自体が4Kの画素数で特殊な技術を使用せずに4Kを実現しているので、4Kであることは間違いありません。
メリット
- パネル自体が4Kの画素数なので間違うことがない
- デジタルシネマ向けなので色深度12bitなど性能がとても優れている
デメリット
- とにかく高額
- 重量が重い
- 十分な明るさだが、他方式より若干輝度が低い
- ホーム向けにはオーバースペック
参考機種
液晶(透過型3LCD)斜め0.5画素ずらし
現在、液晶の斜め0.5画素ずらしはEPSON社の1機種のみ発売されています。パネルがフルHDのものなので、EPSON社のWEBページでも明記されている通り、4K相当(擬似4K)です。透過型3LCDはこれ以上解像度を上げるのが難しいので、他社からも発売されていません。
メリット
- 4K相当だがフルHDプロジェクタよりは遥かに高画質
- 低価格である
デメリット
- 縦横の解像度が4Kに達していない
- 4Kを満足しているDLP斜め0.5画素ずらしと同等の価格
- 4Kを満足しているDLP縦横1画素ずらしより高い
参考機種
DLP斜め0.5画素ずらし
各社からDLPの斜め0.5画素ずらしの機種が発売されています。解像度が4Kを満足しており、パネル画素数2716×1528を斜めに0.5画素ずらすので、画素数は4Kの830万画素です。出力画素数を3840×2160と明記しているメーカもあります。
メリット
- LCOSよりも低価格
- 軽い
- DLP縦横1画素ずらしに比べて画素の滲みが少ない(パネルの画素数が多いため)
- 4Kの解像度を満足している
- 高速フレーム必須なので、フルHDのDLPよりレインボーノイズが低減する
デメリット
- DLP縦横1画素ずらしよりも高額
- LCOSに性能は劣る
参考機種
DLP縦横1画素ずらし
各社からDLP縦横1画素ずらしの機種が発売されています。解像度が4Kを満足しており、画素数は4Kの830万画素です。出力画素数も3840×2160と言え、メーカの仕様にも明記されています。
メリット
- 4Kで最も低価格、他方式より圧倒的に安い
- 軽い
- 4Kの解像度を満足している
- 高速フレーム必須なので、フルHDのDLPよりレインボーノイズが低減する
デメリット
- DLP斜め0.5画素ずらしに比べて画素が滲みやすい(パネルの画素数が少ないため)
参考機種
まとめ
低価格の4Kプロジェクタが登場し、本当に4Kなのか疑問がありましたが、画素ずらしと呼ばれる特殊な技術で高額なパネルを使用せず4Kを実現しています。
LCOSは非常に高額でデジタルシネマ向けのため、ホームユースではオーバースペックです。
おすすめの低価格4Kプロジェクターは以下を参考にしてください。
「まだHDで、いいかなぁ」と思っている人は以下の記事を参考にしてください。
「大画面で見たいけど、できるだけお金はかけたくないよー」と思っている人は、激安のプロジェクターで試してみるのがいいかもしれません。安い機種で気をつけるところは「本当にフルHDかどうか」です。1万円台から購入できる1920×1080のフルHDパネルを使用した製品もありますよ。
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