ホームシアターで最初に思い浮かぶのはプロジェクタですね。テレビは機器そのものに表示面がついていますが、プロジェクタでは内部で作った映像を機器外部に投射して映像を見ます。
映像は100インチ以上に投射することもでき、プロジェクタのレンズを調整することで投射後の画面を自由自在に縮小拡大できます。
プロジェクタは映像を作り出すパネルタイプに種類があります。今回は、パネルタイプの種類とそれぞれの仕組みと特徴を説明します。
パネルタイプ
プロジェクタって各メーカがいろんな機種を発売しており、何を選んだらいいのか迷いますよね。ホームユースだけでも100種類を超える機種が発売されています。
プロジェクタの性能の中でも映像を作るパネルタイプに種類があります。映像機器の心臓部なのでパネルタイプによってそれぞれ特徴があり、機種を選ぶ基準になります。
現在流通しているプロジェクタのパネルタイプには以下の3つの種類があります。
- 液晶(透過型3LCD)
- DLP
- LCOS(反射型3LCD)
各タイプの要約
各タイプについて、これ以降に説明を書いていますが、あまりにも詳細な内容になったため、要約としてメリットとデメリットのみ抜きだします。
液晶(透過型3LCD)
メリット
- 構造がシンプルなため他の方式に比べ軽量で安価
- 明るい光源ランプを用いれば容易に高輝度にできる
- レインボーノイズは発生しない
デメリット
- 液晶の透過率を完全に0%にできないので、真っ黒にすることが難しい(黒浮きする)
- 画素数が少ないと画素の境界に格子状の黒い線が見える
- 高精細化や高画質化に限界がある。
DLP
メリット
- 光の反射を制御しているので、真っ黒にできる(黒浮きがなくコントラスト比が高い)
- 明るい光源ランプを用いれば容易に高輝度にできる
- DMDの構造がシンプルなので高解像度化が容易
- カラーホイール方式は構造がシンプルなので安価
デメリット
- カラーホイール方式のレインボーノイズを気にする人もいる(人によって感じ方は違う)
- プリズム方式は光学系が複雑で高額
現状、ホームユースではカラーホイール方式が主流です。プリズム方式は映画館などの業務用で使用されます。
LCOS(反射型3LCD)
メリット
- 液晶の中では高画質化が容易
- レインボーノイズは発生しない
デメリット
- 光学系が複雑なので高輝度化が難しい
- 光学系が複雑なので高額
現在流通している4K以上のプロジェクタはDLPかLCOSです。透過型LCDは見かけません。
これより後は各タイプの詳細な説明となります。難しい方は読み飛ばして最後のまとめを見てください。まとめでフルHDと4Kのおすすめタイプを書いています。
液晶(透過型3LCD)
液晶テレビと同じように液晶パネルを利用したものです。プロジェクタのパネルタイプで最も古いタイプですが、液晶テレビと同様に高画質化や高輝度化を実現することで今でも現役で進化しています。
液晶テレビは画面そのもののが液晶パネルで、画面サイズと同じサイズの液晶パネルを使用しています。
プロジェクタでは、画面サイズよりはるかに小さい液晶パネルを用いています。後方から液晶パネルに光源ランプからの光を透過させることで映像を作り出し、その透過光をレンズで拡大して外部に放出することで、スクリーン上に大画面の映像を映し出します。
液晶テレビも厳密には透過光を利用しています。液晶面のすぐ後ろにバックライトを配置して、バックライトの光を液晶に透過させ、その透過した光を画面として見ています。
液晶タイプの中でも透過光を利用するタイプを透過型液晶ディスプレイと呼び、LCD(Liquid Crystal Display)と昔から呼ばれています。(最初は透過型しかなかったので、わざわざ透過型とは呼びませんでしたが)
また、液晶の色の組み合わせ方も液晶テレビと異なります。
液晶テレビはパネルそのものを見ることになるので、1画素ごとに色の三原色であるRGBが隣り合って並んでいます。各色の素子に電圧をかけることで液晶の透過率を変化させ濃淡を実現します。拡大するとRGBを個別に認識できますが、拡大せずに普通に視聴すると人間の目にはRGBが混合されたフルカラーとして認識されます。
出典:3LCDサイトより
プロジェクターでも昔は液晶テレビと同じように1枚の液晶パネルで映像を投射していました。しかし、1画素ごとに3色分の素子が必要となるため、高精細化が難しくフルHDのプロジェクターからは色ごとに分けた3枚の液晶パネルを用い、それぞれの色の映像を同じ場所に重ねて投射する3LCD方式が主流になりました。
具体例を挙げるとフルHD(1920×1080)を実現するためには、以下のようになります。
- 1LCD方式:1920ドットx3色x1080ライン=6,220,800画素x1枚のLCD
- 3LCD方式:1920ドットx1080ライン=2,073,600画素x3枚のLCD
このように透過型3LCDは、プロジェクタの元祖である透過型1LCDから進化したものになってるので、透過型LCDが古い技術で性能が悪いという訳ではありません。
ただし、透過型液晶パネルの構造上、透過させる各素子の液晶部分の隣に液晶を制御する駆動回路が必要なため開口率(各素子の液晶の比率)を大きくできません。そのため高精細化や高画質化には限界があると言われており、その対策として後述するLCOSが登場しています。
メリット
- 構造がシンプルなため他の方式に比べ軽量で安価
- 明るい光源ランプを用いれば容易に高輝度にできる
- レインボーノイズは発生しない
デメリット
- 液晶の透過率を完全に0%にできないので、真っ黒にすることが難しい(黒浮きする)
- 画素数が少ないと画素の境界に格子状の黒い線が見える
- 高精細化や高画質化に限界がある。
DLP
DLPは透過型LCDの次に開発された技術です。DLPは「Digital Light Processing」の略称で、DMD(Digital Micromirror Device)と呼ばれる極小ミラーを画素数分並べ、個別にミラーの角度を変えることで光の反射を変化させ映像を作ります。
出典:TEXAS INSTRUMENTS社のDLP製品ページ
液晶とは全く異なる技術のため、DLP方式のテレビは存在しません。
液晶は化学反応を利用していますが、DLPは機械的な動作で実現しています。機械的だと言っても古い技術ではなく液晶よりも新しい技術です。この技術ができたときには「えっ、今時機械的に動かすの?」と半信半疑でした。当時はまだマイクロマシーンが知れ渡っておらず「機械的=古い」イメージでした。DLPがマイクロマシーンのはしりです。画期的な技術です。
DLPで反射した光はレンズを通して拡大されてスクリーンに投影されます。この部分は他のタイプのプロジェクターと同じです。
出典:シャープ社 マルチメディアプロジェクター XG-MB70Xより
DLPに当てる光源の作り方が透過型LCDと異なり、RGB3原色またはW(白色White)を加えた4原色を用意してDLPに当てます。DLPはDMDの角度を変えることでスクリーンへ向けて光を反射させる時間を制御します。その反射時間によって各色に濃淡をつけフルカラーを実現します。
また、各色を作る方式がDLPには2種類あります。
カラーホイール方式
- 白色の光源を3原色に塗り分けたカラーホイールと呼ばれる色フィルタを通すことで原色を作り出し、その透過光をDMDに当てます。
- 3原色の光はカラーホイールで作っているため、時間ごとに変化します。
- スローモーションで表現すると、スクリーンには赤の画面→緑の画面→青の画面が切り替わって投影されます。
- スクリーンを眺めているときには問題ありませんが、視線をずらしたりすると「レインボーノイズ」と呼ばれる色の切り替わりを認識する場合があります。(人によって感じ方が違う)
- RGBの切替速度を早くしてレインボーノイズを低減している製品もある。
プリズム方式
- 白色の光源をプリズムに通して色を分離させ、各色に対応するDMDに当てます。
- DMDは3色同時に処理するため、スクリーンに投影された映像も色が切り替わることはありません。(レインボーノイズが発生しない)
- 光学系が複雑なため高額になります。
メリット
- 光の反射を制御しているので、真っ黒にできる(黒浮きがなくコントラスト比が高い)
- 明るい光源ランプを用いれば容易に高輝度にできる
- DMDの構造がシンプルなので高解像度化が容易
- カラーホイール方式は構造がシンプルなので安価
デメリット
- カラーホイール方式はレインボーノイズを気にする人もいる
- プリズム方式は光学系が複雑で高額
現状、ホームユースではカラーホイール式が主流です。プリズム方式は映画館などの業務用で使用されます。
僕もカラーホイール方式のDLPを使用していますが、普通に見ている分にはレインボーノイズは気になりません。
横を向いたとき(これは視聴せずに横の人と喋るとき)や激しいアクションで画面の端から端までを高速で視線で追うときに若干感じます。真っ暗なシーンで一部だけが極端に明るい(字幕など)ような場合にしか感じません。通常の明るさのシーンでは高速アクションでも気になりません。
LCOS(反射型3LCD)
LCOSとはLiquid Crystal On Siliconの略であり、反射型液晶のことです。 もともと液晶ディスプレイは透過型のみでしたが、反射型と呼ばれる液晶が後で登場しました。当初、反射型は電子書籍やガラケーの省電力対策のために開発され、バックライトなしで外光の明るさだけで映像を見ることのできる液晶です。
反射型は高解像度化が透過型に比べ容易なためLCOSとして高解像度映像装置向けに開発されました。
反射型の仕組みは、液晶面に反射層を設けることで、液晶を透過した光がそのまま反射して戻っていきます。
出典:キャノン社 テクノロジー | 開発者が語る – 4Kプロジェクター -より
プロジェクタとして機能させるためには光源と液晶の間にPBS(polarization beam splitter)と呼ばれる偏向板を設置し、光源からの入射光と反射光を異なる方向に屈折させる必要があります。非常に複雑な光学系となるため高額で、PBSを介するので高輝度にすることが難しくなります。
その代わり反射層の裏に液晶駆動回路を配置することができるので、透過型液晶で難しかった開口率を100%近くまで上げることができます。つまり高画質化が容易にできます。
現在流通している4K以上のプロジェクタはDLPかLCOSです。透過型LCDは見かけません。
メリット
- 液晶の中では高画質化が容易
- 格子状の黒線を抑えることができる
- レインボーノイズは発生しない
デメリット
- 光学系が複雑なので高輝度化が難しい
- 光学系が複雑なので高額
まとめ
プロジェクタのパネルタイプには液晶(透過型3LCD)、DLP、LCOS(反射型3LCD)の3種類があります。
各タイプの特徴を一言で表すと次のようになります。
- 液晶:フルHDまでであれば安価で高輝度の製品が揃っている。レインボーノイズはないが、黒浮きや格子状の黒線を気にする人もいる。
- DLP:4K以上の高解像度の製品も高輝度で安価である。コントラスト比も高い。レインボーノイズが発生する可能性がある。
- LCOS:4K以上の高解像度の製品があるが、輝度が他の方式に比べ低く、また高額である。レインボーノイズはなく格子状の黒線も抑えられている。
フルHDまでなら液晶かDLP、4KならDLPかLCOSがいいと思います。
レインボーノイズが気にならない人はDLPが安価で高性能なのでお薦めです。
一度もDLPで視聴したことがない人はレインボーノイズに注意してください。気にならない人もいますし、レインボーノイズ対策をしているDLP製品もあるので、店舗での視聴か製品レビューを確認することをお薦めします。
以下の記事でフルHDの低価格プロジェクタの製品比較を行ったので、興味がある人は見てください。
また、4Kプロジェクタを詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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